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好きなことを、気ままに、好き勝手に、綴る。

音盤巡り 第5回「Empathy」上田麗奈

様々な音楽の中からアルバムを1枚取りあげて、アルバムを聴いた感想や、アルバムに対する想いや感想、聴いていた当時を振り返ってみたり、なぜこのアルバムが好きなのか?などなど個人的なことを綴っていく、それが音盤巡り。
 
今回取り上げるのは上田麗奈さん「Empathy」です。
 
近年、様々なアニメ作品に出演して声優としての活躍が著しい上田麗奈さん。
元気はつらつな役柄やおっとりした天然っぽい役柄から、凛々しい役柄や狂気染みた役柄まで、幅広い演技をそれぞれの作品を通して魅せてくれているそんな彼女が、初めてのフルレンスアルバムを2020年3月18日についにリリースしました。
上田麗奈さんは2016年12月にミニ・アルバム「RefRain」を個人名義でリリースし、アーティスト・デビューをしてから早3年ほど。デビューしてからもコンスタントにリリースがあったわけでもなく、2018年2月にシングル「sleepland」がリリースされるまでにも1年強の間隔が空き、単独ライブを行うこともなく、非常にゆったりとしたペースで音楽活動をされていました。
2019年11月、そこへ唐突にアルバムをリリースするという一報が入り、ついに動き出したかと非常に楽しみにしておりました。
作詞や今までにないポップな曲調の楽曲などに挑戦。
上田麗奈が今表現したいことを、Kai Takahashi(LUCKY TAPES)や、
ORESAMAなど豪華作家陣が書き下ろした新曲を収録。
凛とした透き通る歌声が楽曲に鮮やかな色をつけ、”アーティスト上田麗奈"としての新たな一面を魅せる。
と公式にリリース発表とともに記載があり、楽曲提供・製作陣も公表され、期待値が高まる中でどのようなアルバムとなったのか?
先行で公開されたMV「あまい夢」と「アイオライト」を聴いた感じから、とてもポップなアルバムになる雰囲気は感じていました。感じてはいましたが、実に緻密に計算されて作られたポップさがこのアルバムには詰め込まれているように思います。1曲1曲ごとにどんな感じで歌い、音や言葉をどう置いていくのか?そういったことを考えながら作られているように感じました。
シンガーとしての歌の上手さ・技術をしっかりと持っていながらも、あえてピッチや音程を外してみたり、ポエトリーディングっぽく・・・というよりミュージカルに近いような唄い方をしていたり。演じるように唄う、そんな言葉がしっくりと来るような唄い方をしていて。アーティストという言葉の本来の意味、芸術家のような彼女自身の独特の表現がしっかりと刻み込まれていて“新たな一面を魅せる”という文言に嘘偽りなしだと思います。
柔らかな透き通る声質と楽曲の親和性が高く①「アイオライト」や②「あまい夢」のような明るい曲でも唄い方に無理がなく、ナチュラルな歌声になっている。それでいてどこか暗さ・ダウナーさを感じさせるのは彼女の本質によるものなのでしょう。①②④と比較的明るめで、ブラック・ミュージックを下地にした楽曲で展開したかと思えば⑤でアルバム全体を通して異彩を放つ曲が唐突に現れ、⑥でまた少し光が差すような感覚を味わい、inst曲⑦を挟んでこれまた異彩を放つ⑧でぐっと彼女の表現の鋭さを味わい、⑨でミニ・アルバム『RefRain』から発展・拡げたような内省的な楽曲で包み込み、⑩で素朴ながらも一際強く他者との繋がりを感じさせ、⑪の穏やかで優しい歌で締めくくられる。アルバムの流れの間に③⑦とinst曲が挟み込まれていますが、このinst曲があるとないとではアルバム全体の印象がガラリと変わっていたことでしょう。この2曲のinst曲があることによって全体のバランスが整い、よりしなやかで美しい流れになっていると思います。
各Webインタビューを拝読したところ“共感”がテーマとなっており、彼女自身が演じてきたキャラクターたちと“共感”した部分を抽出して落とし込んでいる、とのことで。それほどアニメを観ていないので、どの曲にどのキャラの“共感”が込められているのかは私にはわかりません。しかし、それだけでなく他者と繋がり共感していくことを求めているというのは感じられます。後ろ向きでネガティブな感情に飲まれそうになるけれど、それでも一歩前へと進んでみよう。光を目指しているわけではないけれど、前へ進んでみようという彼女の意思が垣間見えます。
あと歌うことが苦手(嫌い)と語られていたりもしましたが、今までに様々なキャラソンを歌ってきたこと、その経験が彼女にとっての強みになっているように思います。その経験があるからこそ、各楽曲でどういう唄い方をしていくのかという声優であるからこそできる表現というものを突き詰められているように感じます。⑤「いつか、また」⑨「aquarium」の2曲なんて、上田麗奈の表現力・演技力の真骨頂と言っても過言ではないような曲でしょう。
声優としての強みを出した作品は他にも東山奈央さんや夏川椎菜さん、悠木碧さんらが作られていますが、これは確実に上田麗奈さん自身にしか作れない作品だと思います。ポップでありながらも独自性の強さを打ち出しているため、正直に言えば好き嫌いの好みがはっきりと分かれるかと思います。私自身にとってはこの作品はとても優れたポップ・ミュージックが詰め込まれた傑作であり、非常に好きなアルバムです。
役に入り込むという彼女らしく、歌を唄うという役に入り込み、演じるように唄う“歌じゃない歌”は、聴く人によっては“共感”を生むとともに大切な宝物のようになっていくのではないだろうか、なんてふと思いつつ締めさせて頂きます。
【収録曲】 
作詞:上⽥麗奈 作曲・編曲:Kai Takahashi (LUCKY TAPES)
02. あまい夢
作詞・作曲:ORESAMA 編曲:⼩島英也
03. Falling
作曲・編曲:⽯川智久
作詞:安藤紗々 作曲・編曲:広川恵⼀ (MONACA)
05. いつか、また。
作詞:RIRIKO 作曲:⼭⽥かすみ 編曲:笹川真⽣
06. きみどり
作詞・作曲:Chima 編曲:下川佳代
07. Another
作曲・編曲:⽯川智久
08. aquarium
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:⾼橋 諒
09. 旋律の⽷
作詞:RIRIKO 作曲・編曲:⽯川智久
10. Campanula
作詞:上⽥麗奈 作曲・編曲:加藤達也
11. Walk on your side
作詞:松井洋平 作曲・編曲:⽥中秀和 (MONACA)
Empathy

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