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音楽と声優②〜声優音楽の音楽性〜

「音楽と声優」について、考えていこうと始めたテーマ。
第1弾は声優音楽史を振り返ってみようと思い、あれこれ調べつつ個人的な推察を交えながら書かせて頂きました。
間違っている部分も多々あったかと思いますが、個人でやっている故に平にご容赦くださいませ。
さて、今回はその第2弾というわけなのですが・・・
正直、何をどう書けばいいのか途方に暮れております(笑)
風呂敷を広げ過ぎて、どこから手を付ければいいのかがさっぱりわかりません。
まぁそんなことを言っていても筆は勝手に進まないので、捻り出していこうかと思います。
 
前回は声優音楽史を振り返ったので、今回は声優音楽そのものに焦点を当てていこうかと思います。
声優音楽そのもの・声優楽曲の音楽性について。
とはいえ、個人でできることなんてたかが知れています。
専門的な音楽知識があるわけでもなく、圧倒的に資料も少なければ、それを得たり補うにも時間もお金も足りない。
手元にある資料も基本的に女性声優に関するものが多いため、偏りもあります。
かなり乱雑な記述になることをまずはご了承くださいませ。

 

声優音楽の音楽性、といっても簡潔にまとめられるものではありません。
現在の声優音楽は複雑極まりなく、ロック・ポップ・テクノ/ハウス・ファンク・スカ・ジャズ等々、様々な音楽ジャンル要素を内包し、独自の音楽性を樹立しているように思います。
声優音楽が世に出始めた頃からそうだったのか、というとそうではないように思います。
この辺は以前に、プロデューサーでありライターでもある冨田明宏さんがTV番組「関ジャム」にてアニソンについてお話しされてたこととリンクすると思います。
アニソンと同様に90年代にJ-POPの影響を多分に受け、J-POPと同じクオリティの音楽が生まれていき始めたのではないかと考えています。
その中で声優さんであることから、その“声”という特性を活かすような音楽活動をされたり、声優さん自身が望む方向性の音楽活動をされたり、多様化していく始まりとなってのではないかと思います。
あまり手元に資料が少ないのですが、例えば前回も名前を挙げさせていた頂いた椎名へきるさん。
デビューしてから数枚のアルバムに収録されている楽曲は、アイドル路線のようなポップスが中心的でしたが、次第に彼女が啓蒙しているハードロックを取り入れた路線へと変わっていったようです。
林原めぐみさんはスレイヤーズ関連で『Give a reason』や『Just be conscious』などアップテンポな曲を歌うのが印象的であったりはしますが・・・
『The GIFT』(「Iravati」収録)や『ふたりぐらし』(「ふわり」収録)のようなAORを感じさせる楽曲だったり、フレンチポップ感が漂う『-Life-』(「bertemu」収録)があったりして、飛び抜けて明るかったり、そっと寄り添うように優しかったり、実に様々な声の表情で聴く者を魅了し、楽しませてくれているように思います。
櫻井智さんは元々がアイドル出身であったこともあり、声優へ転身されてからの音楽活動も比較的にアイドル的なポップスを多く歌われていたような印象があります。
高山みなみさんがやっていらしたTWO-MIXは、高山みなみさんの高い歌唱力とバキバキのクラブ・サウンドを取り入れたエレクトロ・ミュージックで、エモーショナルな楽曲が多かったように思います。
國府田マリ子さんはその特徴的な声質を活かし、シンセポップやUKサウンドのテイストを感じさせる楽曲だったり、緩やかなサウンドの楽曲やアップテンポな楽曲などを歌われていたかと思います。
アイドル路線から始まりつつも、この頃から様々な音楽的試みがなされ、それぞれの声優さんに沿うようなスタイルを、それぞれに確立させようと試行錯誤が繰り返されていたように思います。
 
また楽曲製作陣に関しても職業作家による楽曲提供だけでなく、ミュージシャン・バンドマンとして活動している人たちによる楽曲提供も行われていたのも、声優音楽が多様化していく要因の一つだったと考えられます。
(岡崎律子さんや奥井雅美さんらが林原めぐみさんに楽曲提供していたように)
楽曲提供だけでなく、制作にも多くのミュージシャンやバンドマンが関わっていらっしゃいます。
國府田マリ子さんのプロデューサー・制作陣には亀田誠治さんや井上うにさん(井上雨迩さん)や西田進さんなど、今現在音楽業界に名を轟かせる人たちが参加していたり。
(上記に挙げた方々は椎名林檎さんのプロデュース・制作に携わっていらっしゃいます)
椎名へきるさんのアルバム(9th以降)のプロデュースにはTM NETWORK木根尚登さんがされていたりします。
著名なプロデューサー・ミュージシャンらが90年代から声優音楽の制作に結構携わっていらっしゃったりしていたのです。
 
2000年代、この頃から畑亜貴さんや菅野よう子さん、梶浦由記さん、神前暁さん、上松範康さん、Tom-H@ckさんといった現アニソン・声優音楽シーンに置いて重要な人物たちが頭角を表し始め、アニソン界隈の盛り上がりが加速し始めた時代。
様々なアニメの劇伴(BGM)を手がけられたり、キャラソンを手がけられたりし、今までのアニソンの常識を覆すような試みがなされ、それは声優音楽シーンにも影響を及ぼしていったように思います。
90年代から始まった声優アイドル路線は声優アーティストへと変わっていった。
キングレコード三嶋章夫さんにスカウトされ、矢吹俊郎さんと出会い歌唱スタイルを変え、巧さと圧倒的な声量、AORを基調としたロックサウンドを取り入れた楽曲群で一躍台頭していった水樹奈々さん。
菅野よう子さんのプロデュースを受けて90年代後半から活動を始め、派手さはないものの様々な音楽要素を内包した音楽性が高い評価を受けていた坂本真綾さん。
(2003年以降は菅野さんのプロデュースから離れられていますが)
透明感のある柔らかな歌声で物語性を多分に含んだ楽曲を歌う堀江由衣さん。
声優として持ち前の表現力を使い声色を作り込み、アイドル要素を含んだホップ・ソングを歌いこなす田村ゆかりさん。
ポップやパンク、ミクスチャーの要素を取り入れた音楽活動をされている新谷良子さん、などなど。
声優音楽はますます多様化していき、音楽性といっても一括りで語れるものではなくなっていきます。
あと付け加えると、90年代の終わりとともにブームが終息した渋谷系がアニソンに落とし仕込まれ、アキシブ系なるものが生み出され、渋谷系音楽の影響を受けたミュージシャン・バンドマンらがアニソン・声優音楽の制作に携わっていくようになっていったのもこの頃だったのではないかと思います。
 
多様化は2010年代に入るとさらに進み、声優さんのソロ・デビューもますます増えていきました。
その中で声優さん側が主導するような作品作りが徐々に増えていきます。
声優さん個人の趣向を汲み、それに沿うように楽曲のオーダーが行われ、邦楽シーンで活躍する様々なアーティスト、クリエイターが楽曲提供するようになります。
例えば花澤香菜さん、北川勝利さん(ROUND TABLE)が楽曲提供やプロデュースを行い、渋谷系の血脈を受け継いだ楽曲が多く生まれました。
今年リリースされたアルバムでは佐橋佳幸さんをプロデューサーに迎え、彼女自身が10代から20代にかけてよく聴いていたアーティストたちによる楽曲提供を受けています。
上坂すみれさんは彼女自身が好きなユーロビートやメタルなどを取り入れており、エッジィーな音楽活動をされているような印象があります。
豊崎愛生さんや中島愛さんはご自身たちが敬愛している70年代〜80年代の歌謡曲やアイドル・ポップなどを取り入れた音楽活動をされていたりします。
田所あずささんはタドコロックと銘打ち、ロックにこだわられた活動を展開されています。
声優さん自身の趣味嗜好を具現化した音楽活動は、声優音楽の独自性をより強くし、音楽としての質の向上を促していった気がします。
J-POPシーンで活躍するアーティストが声優さんに楽曲提供を行う、というのは以前からありましたが、近年はその傾向がより顕著になっていると思います。
上記に挙げた北川勝利さんやミトさん(クラムボン)、沖井礼二さん、カジヒデキさん、中塚武さん、奥華子さん、前山田健一さん(ヒャダイン)、清竜人さんなど、実にいろんなアーティストが楽曲提供を行なっています。
中でも異彩を放っているのが田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)と大石昌良さん(別名義:オーイシマサヨシ)ではないでしょうか。
田淵さんは以前からアニソン好きを公言し、自身のバンドでの活動の傍らで楽曲提供を行い、田代智一さん、畑亜貴さん、黒須克彦さんとともにプロデュース・チームQ-MHzを結成しています。
大石さんは一度ご自身のバンドを解散後(現在再結成しています)、ソロ活動を行い、アニソン関連専用にオーイシマサヨシと名義を作り楽曲提供を行い、Tom-H@ckさんとOxTを結成されています。
この2人が提供する楽曲は声優音楽・アニソンシーンに置いて非常に高い人気を誇っているように思います。
楽曲の転調の多さが特徴的で、フックがあり、耳に残りやすいのだと個人的には思います。
 
また楽曲を提供するクリエイター側にも変化が起きています。
黒須克彦さん、俊龍さん、宮崎誠さん、R・O・Nさん、斎藤真也さん、渡辺拓也さんといった00年代よりアニソンのフィールドで活動してきた人たちが徐々に頭角を表してきたり。
90年代〜00年代に多様な音楽シーン(J-POPもアニソンも含め)を体感してきた渡辺翔さんやWEST GROUNDさん、睦月周平さん、光増ハジメさんなどの若手クリエイターたちが現れたり。
またMONACAElements GardenQ-MHz月蝕會議ロック・フィールドなどクリエイター集団ないし会社を形成し、集団もしくはそこに属するクリエイター個人が楽曲提供をすることも増えました。
またボカロP、歌い手として活動していた人たち、ZAQさん、やしきんさん、ヒゲドライバーさん、堀江晶太さん(PENGUIN RESEARCH)らが現れて楽曲提供するようになってきたのも10年代の特徴と言えるかと思います。
 
あと90年代からありましたが、声優さん自身が作詞を手がけることが本当に増えたように思います。
自身が歌う楽曲で、声優さん自身が作詞を手掛けることは今は割とデフォルト化してしまっている感じがします。
近年では早見沙織さんや豊永利行さん、東山奈央さんのように自身で作曲を行う声優さんも現れたり、夏川椎菜さんのように自身のプロデュース自体に携わる声優さんも出てきています。
そのうち音楽活動においてトータル・プロデュースを行う声優さんが出てくるかもしれませんね。
 
声優音楽の制作に様々なクリエイターが関わり出し、クオリティは年々増していき、その音楽性は多様化から混沌とした模様へと変わっていっているように感じています。
それはアニソン界隈も同じように思います。
音楽ジャンルという垣根を感じさせない、幅広い楽曲たち。
ポップ、ロック、メタル、ニューウェイブサイケデリックシューゲイザー、シティポップ、ギターポップネオアコパワーポップ、ファンク、ソウル、ジャズ、スカなどなど本当に幅広い。
幅が広過ぎるゆえに、楽しみ方も千差万別で。
どう楽しんでいいかわからない、ということもあるように思います。
テクノロジーが発展し、打ち込みだったり、生バンドだったり、サウンド面での趣向も非常に凝っています。
それゆえに興味が尽きない、とも言えますけれど。
近年は特にバンドでのサウンドを重視したような楽曲が多く作られているように思います。
というのも、音源を出すということはライブ・コンサートを行うということが通例化してきており(例外もありますが)、
ライブでの再現性を考えて作られているような気がします。
まぁ別にライブやるのに何もバンドがいなければいけない、という必然性はないのですが、バンドがいた方がライブでの魅せ方が映える、ということもあるのかもしれません。
とはいえ、バックバンドなしでのライブやコンサートもあります。
この辺は観に来るお客さん側の趣味志向に依るかと思います。
あとは声優さん側・制作側がライブ・コンサートをどう観せたいのか?というところでしょう。
とても高いクオリティの音楽を作り出している声優音楽業界ですが、1つだけ個人的に気になることがありまして・・・
最近の楽曲は音数が多いものが増え過ぎており、少々食傷気味になってしまう、飽きられやすくなってしまうのではないか?とちょっと思ったりします。
BPMの高速化、音数の多い楽曲の増大。
これは何も声優音楽に限った話ではなく、アニソンもJ-POPにも、邦楽シーン全体に言えることかもしれません。
 
ただこれほど多様化していながらも、いまだにどこか音楽業界の中ではイロモノ的に見られることがあるのは事実で。
声優・アニソン界隈の音楽は広義的な意味合いでポップ・ミュージックだと私は考えており、もっと評価されても良いと感じております。

かつて、音楽雑誌「音楽と人」にて花澤香菜さんのインタビューが載ったことがあり、その際にプロデューサーである北川勝利さんのインタビューも少し載ったのですが。
その時に北川さんが「ポップ・ミュージックとしてもっと評価されたい」と仰っていたことをいまだに覚えています。
 
これからますます、声優音楽は混沌としていくでしょう。
ソロ・デビューする声優さんもまだまだいます。
混沌の先にあるのは飽和と崩壊。
声優音楽・アニソン業界の未来は、シーンがどうなっていくのか?
それを考えていく時期なのかもしれません。
せっかくこれほど面白い、興味深い音楽が拡がっているのだから。
 
さて、果たしてこれは音楽性について考えられたのだろうか?という疑問の真っ只中に今いますが(笑)
なにぶん個人で調べたりしてやっている上、専門知識があるわけでもないので、これが限界かなぁと感じております。
一応、次である3回目を考えていますが、それを最後にしようかと考えています。
次回は声優さんそのものに焦点を当てて、考えていきたいと思っております。
それでは、また次回。
 
 
参考にした資料
女性声優アーティスト ディスクガイド

女性声優アーティスト ディスクガイド