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音盤巡り 第3回「PopSkip」伊藤美来

様々な音楽の中からアルバムを1枚取りあげて、アルバムを聴いた感想や、アルバムに対する想い、聴いていた当時を振り返ってみたり、なぜこのアルバムが好きなのか?などなど個人的なことを綴っていく、それが音盤巡り。
 
随分と久しぶりの更新となってしまいました。
さて、今回取り上げるのは伊藤美来さん「PopSkip」です。

 
声優であり、豊田萌絵さんと2人組ユニットPyxisでも活動中。
またStylipSのメンバーでもありますね。
2016年よりソロでの音楽活動を始められ、今作は2枚目のアルバムとなります。
前作「水彩〜aquaveil〜」ではネオアコースティックやギターポップサウンドが詰め込まれた、爽やかなアルバムでした。
今作はその延長、発展型のような作品だと思います。
全体的にシティポップなサウンド感で統一されており、清涼感・爽やかさが前作よりもグッと上がっています。
シティポップに通ずるギターカッティングやワウペダルのエフェクト等がサウンドの随所から感じられます。
伊藤美来さん自身が今年、大学を卒業されたばかりで。
22歳(今年で23歳)という学生から社会人へとなり、一歩ずつ少女から大人の女性へ移り変わっていく時期だからこそ、作れたアルバムかと思います。
まだ大人になり切れず、けれど学生ではないから子供のままでもいられなくて、あどけなさを残しつつも自身が憧れる大人像へと背伸びをしてみる。
そんな印象を受けるアルバムになっていると思います。
 
M01『PEARL』
もう個人的にはどストライクなシティポップ・サウンドで、爽やかさと華やかさに満ち溢れている楽曲。
ベースのグルーヴィさが心地良いなぁと思ったら、元ORIGINAL LOVE小松秀行さんが弾かれているというのは驚きました。
歌い方も前作より大人っぽさを意識しているのがよくわかります。
歌詞もポジティブな内容で、少女が大人へと変わっていく様が描かれていて、リード曲に相応しいものとなってますね。
 
M02『恋はMOVIE』
既発曲(4th Single『恋はMOVIE』収録表題曲)
華やかにホーンが鳴り響くイントロでグッと引き込まれます。
可愛らしくも洗礼されていて、決して明るいだけではなく、コケティッシュな感じのする曲だと思います。
この曲を提供しているの、Superflyで活動されていた多保孝一さんなのですね。
なんか聴き馴染みのある良いベースラインだなぁ、と聴きながら思っていたら沖井礼二さんが弾いていらして納得です。
編曲に中塚武さんがいらしたり、渋谷系ポップスの血脈もちょっと混じっている感じですね。
 
M03『TickTack Invitation』
既発曲(5th Single『閃きハートビート』収録カップリング曲)
一発で誰が作曲したかわかりますね、この曲は。
佐藤純一さんが作編曲されているのですが、曲自体はとてもfhánaっぽさが出ているように思います。
大学を卒業される伊藤美来さんへの卒業ソングとして作られたそうですが、パーティー感のある歌詞と曲だなぁと思います。
新しい世界への旅立つ期待感と切なさが入り混じる歌詞がとても良いですね。
 
M04『Pistachio』
小悪魔っぽい曲、とインタビューで見かけたように思いますが、甘酸っぱく恋を描いた楽曲だなぁと思います。
とてもキュートな感じだけど、歌い方は可愛くなり過ぎないようにしていて。
逆にそれがこの曲の良さを引き出しているように思います。
ポップさは損なうことなくデジタル・サウンドを盛り込んでいて、その上で楽器の生音も丁寧に織り込んでいて。
今までの美来さんとは一味違う側面が垣間見れる楽曲ですね。
 
M05『あの日の夢』
既発曲(3th Single『守りたいもののために』収録カップリング曲)
ですが、ここにこの曲を持ってくるというのが巧い。
ミドルテンポなバラード曲で、美しいストリングス・サウンドに乗せて夢を諦めたくないという強い気持ちを描いた歌詞を歌う美来さんの歌声がとても胸に沁みる。
“誰かの夢を 壊して しきつめた / ガラスの破片 踏んで立ってる”という歌詞が秀逸で。
何度聴いても涙腺を刺激してきます。
 
M06『土曜のルール』
ホーンセクションと美来さんによるフェイクで幕を開ける、ジャジーな楽曲。
ジャジーでいて、アーバン・メロウな感じもあって。
ワウペダルを使ったギターサウンドが絶妙に良い味を出していると思います。
グルーヴィでゆったりと横ノリしながら聴いてしまいます。
大人っぽさ、というのが曲によく出ている気がします。
大西洋平さん作詞作曲、睦月周平さん編曲、とのことで・・・良い仕事するなぁ(笑)
個人的にはアルバムの中で一番好きな曲かなぁと。
 
M07『守りたいもののために』
既発曲(3th Single『守りたいもののために』収録表題曲)
シングルでリリースされた時からこの曲はとても好きで。
ホーンセクション、ブラスの音が曲の温かさ・柔らかさを引き出しつつ、シタールの音色が隠し味になっていて。
陽だまりのような温かさ・優しさを感じさせる楽曲だと思います。
 
M08『閃きハートビート』
既発曲(5th Single『閃きハートビート』収録表題曲)
賑やかなブラス・サウンドと疾走感のある楽曲。
この曲も佐藤純一さんの作編曲ですね。
駆け抜けていくような真っ直ぐな勢いがあって、歌い方もそれに沿うような感じで、可愛らしさと明るさを感じさせますね。
ライブで聴くと楽しいだろうなぁと思います。
何気にギターが木暮晋也さんだったり、ドラムをNONA REEVES小松シゲルさんが叩いていたり、個人的には好きなプレイヤーが参加されていて、ちょっと胸熱ですね。
 
M09『君に話したいこと』
爽やかなギターポップ、というような感じがする楽曲。
他の楽曲よりも歌い方がちょっと強めな感じがしますね。
飾らない等身大の、今の美来さんを描いたような曲で。
変に捻ることもなくストレートな歌い方をしているのは好感が持てますね。
 
M10『灯り』
ゆったりとしたバラードナンバー。
独特な浮遊感を感じさせるサウンドと、孤独感を感じさせる歌詞。
ひとりぼっち、だからこそ誰かと繋がれる・・・そんなことを感じさせてくれる気がします。
暗過ぎず、かといって明るいわけでもなく、静かにそっと寄り添うような歌い方がすっと沁み込んできて。
夕暮れ時にふと聴きたくる1曲ですね。
 
M11『all yours』
既発曲(4th Single『恋はMOVIE』収録カップリング曲)
美来さん自身が作詞された楽曲で、作編曲は睦月周平さん。
明るくてキラキラと煌めくようなサウンドで作られたポップスですね。
この曲は美来さんがやられていた「フレッシュはじめました」という番組のテーマソングとして、ファンと一緒に築き作り上げられたそうで。
だから優しさと明るさを歌声から感じ取れるんだと納得しました。
背中を押してくれる、ポジティブなこの楽曲をアルバムの最後に持ってきているのがまた憎いなぁと思ったりします。
 
元々そんなつもりではなかったのですが、思わず全曲レビューしてしまいました。
総評としては美来さんの癖のないまっさらな歌声とアーバンなサウンドが混ざり合い、彩られた良質なポップ・ミュージックが詰め込まれた作品だと思います。
あとは曲順が本当に良いなぁと。
この曲順だからこそ、このアルバムはとても良いバランスで成り立っていて、既発のシングル曲も違った聴こえ方がしてきているように思います。
アルバム・タイトルに「Pop」と入れていることからポップ・ミュージックへの強い拘りを感じますが、その拘りが良い方向へと作用したアルバムになっていると思います。
今後もこういった路線で突き詰めていった作品を作って欲しいところですね。
Apple MusicやSpotifyなどのストリーミング配信もしていますので、興味のある方はぜひ聴いてみて下さいませ。
 
01. PEARL
作詞・作曲:高田みち子 編曲:水口浩次
02. 恋はMovie
作詞:Sally#Cinnamon 作曲:多保孝一 編曲:中塚 武
03. TickTack Invitation
作詞:RIRIKO 作曲・編曲:佐藤純一(fhána)
04. Pistachio
作詞・作曲・編曲:hisakuni
05. あの日の夢
作詞・作曲:金子麻友美 編曲:水口浩次
06. 土曜のルール
作詞・作曲:大西洋平 編曲:睦月周平
07. 守りたいもののために
作詞・作曲:金子麻友美 編曲:水口浩次
08. 閃きハートビート
作詞:林 英樹 作曲・編曲:佐藤純一(fhána) ホーンアレンジ:井上泰久&佐藤純一
09. 君に話したいこと
作詞・作曲:岸 洋佑 編曲:村木数典、金沢祐介
10. 灯り
作詞:桜アス恵(TRYTONELABO) 作曲・編曲:滝澤俊輔(TRYTONELABO)
11. all yours
作詞:伊藤美来 作曲・編曲:睦月周平