“About A Rock'n' Roll Band”
結成30周年を来年に控えたロックバンド、the pillows。
私にとって、なくてはならない存在であり、音楽にのめり込むきっかけともなったバンド。
なんだかんだで約17年ぐらい、このバンドの音楽を聴き続け、ライブを観続けています。
もはや実家、故郷みたいなものです(笑)
今回は何故、私はthe pillowsが好きなのか?
一体どんなバンドなのか?
私自身が思う彼らの魅力とは何なのか?
などなど書いていこうかと思います。
1989年9月16日に結成以降、メンバーや音楽性の変化を乗り越えながら現在に至るまで多くのリスナーを魅了し、今もアクティブに活動を続けているロック・バンド、the pillows(以下、ピロウズ)
メンバーは山中さわおさん(Vo&Gt)、真鍋吉明さん(Gt)、佐藤シンイチロウさん(Dr)の3人。
ブリットポップやUSオルタナを基調とし、様々なジャンルを消化したロック・ミュージックを鳴らすロック・バンドです。
アニメや漫画が好きな方にはアニメ「けいおん!」でメンバーの名前をモチーフにしたキャラが登場したり(山中さわお→山中さわ子、真鍋吉明→真鍋和)、アニメ化もしたマンガ「SKET DANCE」の第51話劇中にて『Funny Bunny』という曲の歌詞が全部掲載されたり、と言った方が馴染みがありそうですね。
「SKET DANCE」に至ってはそれがきっかけで、アニメ化した際にED曲をピロウズが担当したりしました。
あとは今年2018年に続編映画の公開が発表されているアニメ「フリクリ」の主題歌及び劇中BGMや劇中歌に使われていたことも有名ですね。
彼らピロウズのファンであることを公言するミュージシャン・バンドも世代を超えて多数います。
Mr.Children、BUMP OF CHICKIN、GLAY、UNISON SQUARE GARDEN、怒髪天、ELLEGARDEN、ストレイテナー、チャットモンチー、9mm Parabellum Bullet、Base Ball Bear、a flood of circle、髭(HiGE)などなど。
トリビュート・アルバムも2枚、リリースされており上記に挙げたいくつかのバンドも参加されています。
詳しいプロフィールやバンド・ヒストリーなんかはWikipediaに載っていたりしますので、そちらを参照にして頂くとして・・・
ピロウズはバンドの構成や楽曲の傾向から第一期(1989年~1993年)、第二期(1994年~1996年)、第三期(1996年~2012年)、第四期(2013年~現在)に分けられます。
華々しくデビューするも結果を残せず、初代リーダー上田ケンジさんの脱退という形で終わった第一期。
さわおさんがリーダーとなり、バンドの音楽性をさらに押し広げようと試行錯誤するも、セールスに結び付かなかった第二期。
文字通り「背水の陣」で臨んだ起死回生の一撃だった『ストレンジ カメレオン』からスタートし、そこから緩やかに、しかし着実に支持を集めていき、徐々にバンドの活動が好転していった第三期。
「バンドのメンテナンス&リハビリ」のために2012年に「休憩」として一時活動休止をし、活動再開した2013年から現在へ至る第四期、に分けられます。
活動歴は現時点で28年目、今年の9月16日で29年目を迎えます。
誰もが知っているようなヒット曲があるわけでもなく、愚直なまで音楽と向き合い活動をし続けて。
バンド活動歴の前半(第一期・第二期)は本当に苦しい時期を味わい続けて。
それでもじわじわと右肩上がりでCDセールス・ライブ動員を伸ばしていき、結成20周年記念日には初の日本武道館公演を行い、大成功を納めています。
日本武道館でのライブは私も観に行きましたが、壮大なあの光景は忘れることができません。
こうして日本国内の音楽業界を見渡してみてもかなり稀有なバンドだと思います。
しかも彼らが日本武道館公演を行ったことにより、彼らよりも活動歴が長いながらも同じようにじわじわと右肩上がりを続けてきた先輩バンドたち、怒髪天、Theピーズ、THE COLLECTORSが次々と武道館のステージに立つきっかけにもなっています。
私が彼らピロウズに出会ったのは2000年秋。
第三期を迎えた数年後の時です。
現在のリスナーの多くが、恐らくはこの第三期の時期にピロウズに出会ったかと思います。
私は何故、ピロウズが好きなのか?
それを探るには彼らの魅力とは何なのか、を考えることに繋がります。
バンドなので当然ながら彼らの鳴らす音楽が最大の魅力だと思います。
では彼らが鳴らす音楽の魅力とは何なのか、そこを掘り下げていこうかと思います。
上記に書きましたが、第一期・第ニ期・第三期(第四期)で彼らの音楽性、スタイルは異なります。
異なるものの、根底にあるポップさと普遍的な歌詞の良さは全楽曲共通のように思います。
今回は第三期に焦点を絞って考えてみようと思います。
楽曲の作詞作曲は第一期の頃を除いて、全てさわおさんが手がけています。
(厳密には第二期で真鍋さんが1曲、インスト曲を作られています)
第三期の楽曲はシンプルなバンド・サウンドへと立ち返り、骨太なロック・ミュージックを基調とし、ツイン・ギターという特徴を活かしたダイナミズム溢れる楽曲が多いように思います。
なおかつ、さわおさんがオルタナティヴ・ロックが好きということもあり、オルタナ・サウンドが盛り込まれた楽曲も数多くあります。
どの楽曲もロックでありながらも非常にポピュラリティの高い楽曲ばかりだと思います。
さわおさん自身がバンドとしての音作りには非常にこだわっていらして、アルバム毎にその時のモード(気分)でどういう音作りをしていくのかも変わります。
そして何より普遍性の高い歌詞。
ロマンチックでファンタジックでありながらも、リアリティのある言葉で紡がれる歌詞。
深い孤独や絶望、人の痛みをよく知っているからこそ、描ける歌詞だと思います。
それだけではなく、人としての温かさと弱さも持ち合わせていて。
自分の中に基づく強い信念と希望を込めて歌詞を描かいていると思います。
ご自身で仰られていたことがあるのですが、さわおさんが書く曲は基本的にバンドソング(自分たちthe pillowsのことの歌)か、自分自身のことか、ラブソングかのどれかだと。
楽曲によってはまったく意味のない、バカバカしい歌詞の曲もあったりしますが、それはメロディやリズムにどういう音(言葉)を乗せるのかをとてもこだわっているからで。
別に誰かに向けてメッセージ性を持たせようとして書いた曲は1曲もなかったりします。
そうして描かれた歌詞と、バンド・サウンドが合わさった楽曲たちがピロウズの魅力なんだと思います。
何曲か聴いて頂けたら、と思う楽曲を挙げていきます。
今やバンドの代表曲と言える『ストレンジ カメレオン』
第三期の幕開けとなる契機にもなった曲です。
“まわりの色に馴染まない / 出来損ないのカメレオン”
“逆立ちしても変わらない / 滅びる覚悟はできてるのさ”
“勘違いしないでね / 別に悲しくはないのさ / 抱き合わせなんだろう / 孤独と自由はいつも”
この曲は「音楽業界への遺書」のつもりで作られたと言われており、悲壮感が漂うもののそれだけではなく、希望も感じられます。
この曲はMr.Children(もしくはbank bandで)が何度もライブ中にカバーしており、桜井和寿さんに「生涯で傑作を10曲挙げるとすれば間違いなく入る曲」とまで言われています。
冒頭にも述べましたがマンガ「SKET DANCE」の劇中内で使われた曲『Funny Bunny』
“キミの夢が叶うのは / 誰かのおかげじゃないぜ / 風の強い日を選んで / 走ってきた”
“飛べなくても不安じゃない / 地面は続いてるんだ / 好きな場所へ行こう / キミならそれが出来る”
これほど聴く人を勇気づける歌詞はあまり聴いたことがありません。
「SKET DANCE」内でも《不安で踏み出せない友達の為に一曲だけのライブ》というシーンで使われています。
“Can you feel? / Can you feel that hybrid rainbow? / 昨日まで選ばれなかった僕らでも / 明日を待ってる”
“I can feel. / I can feel that hybrid rainbow. / 昨日まで選ばれなかった僕らでも / 明日を待ってる”
今やバンドのアンセムともなっていると言える曲『ハイブリッド レインボウ』
この曲はバンドソングで「異種混同の虹」という意味合いの曲名となっていますが、この曲に込めた思いについて、さわおさんがインタビューで語られていたことなのですが・・・
「決して七色の虹のように、誰もが思う美しさではないかもしれないけれど、そんなこの3人ならではの虹が、僕には価値があるんだ。それはキミは感じるか?僕は感じてるよ、って」
この曲は確かにバンドソングだったのですが、今となってはいろんな人の思いを飲み込んで、バンドソングを越えてモンスターソングとなっています。
“誰の記憶にも残らないほど / 鮮やかに消えてしまうのも悪くない / 孤独を理解し始めてる / 僕らにふさわしい道を選びたい”
“僕らは間違いながら / 何度も傷ついたけど / Swing god gun, I need it low demon / Brakeなんて踏まない / 壊れてもいいんだ”
冒頭から心を揺さぶられる曲『Swanky Street』
個人的は10代後半~20代前半にこの曲を夜な夜な聴いて、何度も泣きました。
また、サビの歌詞が倫理的あまりよろしくない!というレコード会社の反発に遭い、響きの似た言葉に置き換えているのも特徴だったりします。
“Swing god gun, I need it low demon”と歌詞カード等には記載されていますが・・・
実際には”信号が何色でも”と歌っています。
とてもロマンチックな歌詞が印象的な『彼女は今日,』
“僕には見せいないその笑顔は / なんて美しく可憐なんだ / 時を忘れて”
“不思議な引力に痺れていた / 僕とさっきまで そばにいたんだ / 彼女は今日,”
メロディと相まって歌詞の良さがさらに際立っています。
珍しくストリングスを盛り込んだ楽曲『スケアクロウ』
“夢の向こうまで / 僕は旅を続けるつもりだよ / キミを連れて”
“暮れ行く空 からかう風 / 二人の手は 冷たいけど / 離さないで 歩いていたい / 誓いもなく 信じ合えた / I want call you, Scare Crow”
“偽りに煙る街のざわめきに / 追いやられて気が滅入るけど / たかが千粒の涙が零れれば / 済むことさ ただそれだけさ”
“瞬く星 見知らぬ闇 / 半分だけ 月が笑う / 寂しくない 悲しくない / 僕のために キミが笑う / I want call you, Scare Crow”
“暮れ行く空 からかう風 / 二人の手は 冷たいけど / 離さないで 歩いていたい / 神様より キミを信じる / もうすぐだろう 目の前だろう / 一人じゃない 一人じゃない / 瞬く星 見知らぬ闇 / 半分だけ 月が笑う / You can call me, Scare Crow”
この曲は本当に歌詞が秀逸で。
さわおさんがバンドメンバーの2人に向けて書いた曲なのですが・・・
相棒・同士という言葉を直接的に使わずに「Scare Crow」に置き換えていて。
その「Scare Crow」という単語は友情物語を描いた70年代のアメリカ映画「スケアクロウ」から取られています。
結成20周年の時にリリースされたベストアルバム「Rock stock & too smoking the pillows」に収録されている‘20年’をテーマに作られた楽曲『1989』
“僕はずっと孤独だった / 会いたかった 誰かに / ハジメマシテ コンニチハ / 何がそんなに可笑しいの”
“ただ黙ってしゃがみ込んで / 楽しそうな街にいる / 隠し持った贈り物 / 渡せないで息を吐く”
“Please, cacth this my song / 必要とされたい / Please, cacth this my song / 明日は誰かに会えるかな / Please, cacth this my song / 君に届くように / Please, cacth this my song / 歌っていたのさ 1989”
さわおさんが1989年に上京したばかりの頃の、期待と不安をストレートに綴られた歌詞が胸を締め付けます。
ラスサビに向けて転調して、声を張り上げて歌うところで毎回グッときます。
さて、本当はもっとオススメしたい曲が山ほどあるのですが・・・
なにしろ公式動画・MVがある曲ではないものが多いので(苦笑)
『確かめに行こう』『ジェラニエ』『Beautiful Picture』『Beehive』『MY FOOT』などなど。
挙げた楽曲以外にも、ストレートにロック・ミュージックの楽しさが伝わってくる楽曲もたくさんあります。
Ride on shooting star/the pillows
the pillows / About A Rock'n'Roll Band
公式動画・MV付以外でも『ROCK'N'ROLL SINNERS』『Blues Drive Monster』『RUSH』『No Surrender』『Crazy Sunshine』などなど。
なにしろ活動歴が長い上にコンスタントにリリースを重ねているため、トータルで300曲近く、曲があります(苦笑)
なのでオススメしたりするのも一苦労だし、その時の気分で何をオススメしたいかも変わってきてしまうのです。
長々と書いてきましたが、果たしてthe pillowsの魅力が伝わったでしょうか?
彼が好きだから、私は今もずっと、ピロウズを聴き続けています。
ピロウズは本当に不思議な、というか変わったバンドで。
「良い曲を書いて、良いアルバムを作って、良いライブをやる。それの繰り返し。だけど全然飽きてない」
とは、さわおさんがよく仰られている言葉なのですが。
同じことを繰り返してはいるものの、まったく同じというわけではなくて。
彼らの曲『WALKIN'ON THE SPIRAL』の歌詞にもありますが、螺旋階段を昇り続けているバンドなのです。
同じ場所をグルグルと回っているように見えるけれど、そうじゃなくて。
少しずつ、上へと昇って行っている。
何かする度に、何かが少し違う。
常に最新作が最高傑作だと更新し続けています。
余談
ちょっとした余談話を1つだけ。
これはさわおさん自身が語られたことなのですが・・・
2009年当時、人気絶頂で数千万枚のアルバム・セールスを誇り、イギリスの代表的なバンドOasisが来日公演を行ったのですが・・・
その前座に出ないか?と打診されたことがあったのですが・・・
「断った方が面白いじゃん?」という理由で本当に断っています(笑)
恐ろしい・・・(苦笑)