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小松未可子「Swing heart direction」ディスクレビュー

TOY’S FACTORY移籍後、3枚目となるシングル。
Q-MHz全面プロデュースの作品としては4作品目となります。
今作も引き続き、TVアニメ「ボールルームへようこそ」のタイアップ作品となり、第2クールのエンディングテーマとして物語に彩りを与えています。
前作「Maybe the next waltz」が作品に寄り添い、ワルツ楽曲だったのに対し今作は一転、爽やかなピアノロックとなっています。

 

  

Swing heart direction

表題曲なっている本楽曲。
爽快感あふれるピアノのイントロから幕を開ける今作は、演奏&編曲にピアニストにしてシンガーソングライターであるSUEMITSU & THE SUEMITSU末光篤を招いて作られました。
ピアノロック、ということもあり全体に力強くも柔軟なピアノの音色がふんだんに盛り込まれ、楽曲の爽快感やポップネスを際立たせていますね。
しかしやはりロックということもあり、各パートに耳を傾けると随所にロックらしさもちゃんとあって。
ゴリゴリっとした熱い音のうねりがあり、バックに盛り込まれたストリングスの効果もあってか、ピアノとの親和性がとても高い。
サウンド的には爽やかさの中に熱さが見え隠れする内容になっていると思います。
所々でピアノのフレーズがアクセントになっているのもまた聴き心地の良さに拍車をかけているように思います。
“触れ合ったり離れたりの / ふたりだけど”の詞が象徴するように、歌詞は『男女ふたりの視点』を軸に置かれて、揺れ動くふたりの心を描き出しています。
それがまたタイアップとなっている「ボールルームへようこそ」の主人公・多々良とパートナーとなる千夏の関係性を映し出しており、作品に寄り添った内容に原作・アニメファンにとっては堪らない歌詞となっていますね。
しかし、男女に限らず『ふたり』であれば別の視点から見ることもでき、微妙な距離感のふたりを描き出す、畑亜貴の作詞家としての技量に感嘆させられます。
 “目覚める私の想い / まだ気付かないで”
“本当はとても嬉しくて踊り出してるなんて / まだね 内緒にしよう”
と天邪鬼な一面を表した詞がまた関係性を描くのに拍車をかけているように思います。
展開として2番目のAメロ、“ときどき冷たく突き放すふりで”の“ふりで”の転調が非常に心地良い。
またCメロの展開が聴いていてとても心地が良く、胸を締め付けられます。
大サビの“触れあったり離れたりの”のところでのキーが上がるところもとても良いですね。
爽やかな楽曲展開の中で澄んだ小松未可子の歌声がポップさに満ち溢れ、瑞々しさを感じさせます。
小松未可子の歌声とピアノの音色の親和性の高さが如実に表れており、小松未可子の清涼感のある歌声の良さを際立たさせた秀逸な楽曲だと言えます。
 
「Piña colada & Caipirinha」 
ほとんどの人が聞いたことがないと思われる、お酒の名前からタイトルが取られた楽曲。
どちらも南米発祥のカクテルということもあってか、全体的にラテンっぽさを感じる楽曲ですね。
イントロから鳴り響く、ジャングルビートと呼ばれるドラムの音が印象的。
ビックバンドジャズをベースとした楽曲であり、南米のラテンっぽさも交えられた本楽曲。
個人的にはパッと連想したのが「Sing,Sing,Sing」というスウィング・ジャズの楽曲。
ジャズ・クラリネット奏者であるベニー・グッドマン楽団が演奏する代表曲として知られ、最近では映画「スウィング・ガールズ」で使われたことで有名な楽曲ですね。
そう、今書いていて気付きました。
『Swing』なんです。
カップリング曲なのに表題曲のタイトルにかかっているのです。
気付いてちょっと身震いしました(笑)
とても軽快なサウンドで、ホーンセクションもふんだんに盛り込まれ、グロッケンの音も聴こえ、聴き心地の良さに満ち溢れた楽曲ですね。
よく耳を傾けて聴くと、ドラム&ベースのリズム隊の音が非常に素晴らしく、気持ちが良い。
ベースのうねり具合、ドラムの軽やかなリズム。
ビックバンドジャズをベースとしながらも随所に表れる、ラテン音楽の持ち味がここに表れているように思います。
そして間奏でのボサノヴァなギターアレンジ。
サウンド面を聴いているだけでも南米へ小旅行に出かけたような気分になれます。
歌詞は小松未可子自身と同年代ぐらいの働く女性視点で描かれており、働いている普段の自分からの解放を夢想しているような内容で。
“何も考えないでふっと消えて ただの自分になりたい”
“遠くで3日以上休みたいよね”
など秀逸なフレーズが散りばめられています。
その果てに“ただの自分のことも / 受け入れてあげようかな / 夕焼け綺麗だし”に着地していく様子がまた素晴らしいです。
インタビューで語られていましたが『旅』が裏テーマであるそうですが、またこの『旅』というワードが出てくることにより「Imagine day, Imagine life!」や「また、はじまりの地図」「だから返事はいらない」「my dress code」など、既にリリースされた既存の楽曲との繋がりを感じられ、ちょっとグッと来てしまいます。
これはライブで聴くと非常に楽しく、盛り上がれることは間違いない楽曲だと思います。
 
「Piece of Peace」
イントロからクラップが鳴り響く、ゆったりとしたミドルテンポなナンバー。
まるで歩いているかのような速度感がどこか「ランダムメトロノーム」にも通じるものがありますね。
インタビューで語られている「女子力ほわほわ」というテーマが妙にしっくり来ます。
ゆるく、どこかふわっとしたサウンド。
ギターのカッティングや木琴っぽい音色、柔らかなタッチのピアノ、ちょっぴりジャジーさも感じられるベースのフレーズがこの楽曲の雰囲気を作り出しているように感じられます。 
歌詞はインタビューで語られている通り、1番を田淵智也が描き、それ以降を小松未可子が作詞している。
こちらも小松未可子と同年代ぐらいの女性の、日常をフォーカスしたような内容で。
「Imagine day, Imagine lfe!」のような『超前向き』というよりは『ちょっと前向き進んでみようかな?』ぐらいのゆるさを感じます。
“何が起きるか分かんないけど 進んでみよう / 足跡つけて飛んで避けて めちゃくちゃな道だけど”
“どこまでも歩いて行けるから / 私は少し強くなったハズだよ! だから笑おう”
など幸せを願う等身大の普通の女性が描かれ、小松未可子という一人の女性の人柄や性質が表れているように思います。
インタビューで語られていた小松未可子の理想像であり、こうありたいと願う姿を描いているとのことですが、彼女が座右の銘としている『なんとかなる』が表れているなぁと思います。
“変わらないでいたい マイペースがいいね / だから歩いておうちへ帰ろう”
このフレーズなんかは秀逸の一言に尽きます。
個人的にここのフレーズが一番心を揺さぶられ、グッと来ました。
毛色が異なりますが、斉藤和義「歩いて帰ろう」にも通じるようなものを感じています。
またサビのコーラスワークがとても心地が良く、ライブでみんなでシンガロングした時はとても楽しく、爽快だろうなぁなんて思います。
 
 
Q-MHzの全面プロデュースを受けて4作目(アルバム1枚、シングル3枚)となる今作。
新しくリリースがある度に本当に次から次へと新しい扉を開いていくなぁ、としみじみ思います。
幅がどんどん拡がっていっていて、とても楽しそうに歌う小松未可子を観る(聴く)ことができることが本当に喜ばしく、嬉しく、幸せに思います。
Imagine day, Imagine life!」のリリースを発表した際に公表されたコメント。
「さらなる『未来』の『可能性』を探しにいく旅へ」
それが見事に体現されていて。
“自由な世界で遊ぼうか”と右に左に、いろんな世界を拡げていく姿をこれからももっと観ていきたいですね。