小松未可子「Blooming Maps」ディスクレビュー
2016年9月にトイズファクトリー移籍第一弾としてリリースされたシングル「Imagine day, Imagine life!」より約半年。
前作同様、Q-MHzを全面プロデュースに迎え、新しい旅の始まりを告げる待望の3rdアルバムが完成した。
アルバムとしては実に3年振り。
前述のシングル・リリースから半年の間に行われたライブで披露されたものも含め、新曲10曲+既発シングル曲2曲の計12曲を収録。
アルバム全体としては実にポップかつポジティブな内容になっていて。各楽曲の色合いが実に豊かさを持っており、鮮やか。
「名刺代わりになるような1枚」とご本人は語っておられましたが、旅の物語を見ているような内容になっていると個人的には思っています。
「また、はじまりの地図」
イントロのピアノがとても印象的で、メロディラインがとても美しく、ポップネスに溢れている楽曲。
サビでのギターのリフも実に心地良い。
タイトル通り、はじまりを告げる歌詞も良くて、この曲からどう始まっていくのかワクワクとさせてくれる。
まさに1曲目に相応しい曲。
既発シングル曲。前曲「また、はじまりの地図」とこの曲は繋がりのある曲だとインタビューでも語っていられる通り、自然な流れの曲順で。
シングルで聴いた時とはまた違った意味合いを持つ曲になっている。
ポップな前曲から、ちょっとアッパーなロック・テイストを感じさせるこの曲への繋がりはとても聴き心地が良い。
また、歌詞にある“自由な世界で遊ぼうか”がアルバム全体とリンクしていて実に面白い。
「Catch me if you JAZZ」
今までありそうでなかったジャズ・テイストを盛り込まれた楽曲。
ジャジーなんだけども疾走感もあり、スウィングっぽさも感じさせつつ、非常にポップかつダンサブルな楽曲。
グルーヴ感に溢れ、聴いているとつい踊りだしくなってしまう。
歌詞もとても曲に合っていて、メロディに沿った言葉の置き方が絶妙。
個人的には大好きなScoobie Doのベーシスト、ナガイケジョーさんが弾かれているファンキーなベースラインに胸が熱くなりました。
「ランダムメトロノーム」
ポップ感満載ながらも横揺れのグルーヴ感があり、ゆったりとしたテンポ感が非常に心地の良いミディアム・ナンバー。
淡く、日常の恋の始まりが綴られた歌詞もとても良い。
ギターのエフェクトも絶妙に良い味を出していて、ライブで生バンドで聴けるのが楽しみな曲でもあります。
「純真エチュード」
アップテンポでロック・テイスト溢れるナンバー。
ポップに弾けていて、爽やかさと天真爛漫さを感じさせる。
ストレートに明るさに溢れつつも、自然体な唄い方がとても心地良い。
途中で入ってくるクラップ音も絶妙に良いですね。
ライブでも既に披露されており、楽しく盛り上がれる曲です。
「硝子の地球儀」
前曲から一転、少し落ち着いたトーンの楽曲。
インタビュー等で語られていた、作詞家・畑亜貴さん曰く「聖なるイメージで作られた」というのも納得できる壮大さを感じさせる曲。
儚く、切なく、淡い。
個人的にはそこにイノセント、無垢な感じも加えつつ、希望も込められているのかな、なんて思います。
ふんだんに盛り込まれたストリングスとピアノが楽曲の持ち味をより引き立てつつ、重ねられたコーラスが非常に聴き心地が良いですね。
「My sky Red sky」
fhánaが編曲と演奏に参加しているアルバムの中でもちょっと異色な感じのするコラボ楽曲。
しかし、この一連の流れで聴いていると何の違和感も感じない。
fhána流の楽曲作りも盛り込まれた楽曲構成になっていて、非常に聴いていて面白い。
悲しみに打ちひしがれようとも、前へと進むことを止めない。
強い覚悟と姿勢が込められた楽曲だと思います。
「だから返事はいらない」
この曲も既発シングル曲で。この曲順の流れで聴くと、シングルの時とはまた違った意味合い・色を持った曲として聴こえてきます。
“新しい街 新しい自分 動きはじめた物語は”という歌詞が印象的で、力の抜けたナチュラルな唄い方に爽やかさを感じさせる。
“旅してるような日常”という歌詞の通り、旅の始まりを感じさせる面もあって。
この曲をこの曲順で、この位置に構成されているのが巧妙ですね。
「流れ星じゃないから」
アルバム全体を通して唯一のバラード曲。
ただでさえ儚く切ない、恋の終わりを描いた歌詞なのに、室屋光一郎さんによるヴァイオリンが楽曲の壮大さと切なさをより一層引き立ていて。
歌詞に散りばめれた“過ぎた季節” “花火” “流れ星” “消えていった” “届かない” “泣いてみようか”などのワードが胸を締め付ける。
バラード曲だからというのもあるかと思いますが、そっと柔らかく唄われているのも印象的で。
最後の“叶わない”がフレーズとしても唄い方としても、とても素晴らしいです。
「Lonely Battle Mode」
前曲のバラードからアルバム中随一の華やかなアップテンポなナンバーへ繋げるのは実に見事だなぁと感嘆しました。
この高低差をインタビュー等で女性の切り替えの早さで例えているのは巧いなぁと思います。
アッパーな曲構成で歌詞は男女の攻防が描かれていて。
男としては耳が痛い歌詞ですね(苦笑)
愛情や好意ってちゃんと言葉や態度で示さないと伝わらないものですからね。
曲自体は疾走感に溢れ、ホーンセクションが加わることで実に賑やかさと華やかがあって。
後半のシンガロングがまた気持ちが良い曲ですね。
「HEARTRAIL」
11曲目にしてこのアルバムのリード曲。
ピアノのメロディラインやベースライン、ギターのフレーズによく耳を傾けると軽快ながらも複雑な構成をしている印象がありつつも、王道のポップさに溢れています。
歌詞も非常にポジティブな内容で描かれていて。
「Imagine day, Imagine life!」の歌詞で描かれた“私、強気似合うよね?”が“強くなりたい なりました”に繋がっていたり“Call my trail”が“HEARTRAIL”に繋がっていたりと「Imgine day, Imagine life!」の発展・進化型であることが如実にわかる仕掛けがあるのもまたにくいですね。
始まりの歌っぽいのにこの位置に配置されていて、かえってエンディング感が増しているのも面白いですね。
「my dress code」
さわやかなポップさに満ちていて、後半のコーラスもまた聴き心地が良いです。
最後の曲で湿っぽくならず、何かまだ続いていく予感を感じさせる曲になっているので、聴き終わった後の爽快感が癖になります。
アルバム・リピートで聴いていると、この曲から1曲目の「また、はじまりの地図」へと流れるのがとても自然な感じがして。
延々と聴いていられます。
シングル「Imagine day, Imagine life!」リリース発表時に「派手に、美しく、自然体」というテーマのもと音楽表現を展開していくとありましたが、そのテーマに沿って作られたアルバム内容だと思います。
小松未可子さんの唄い方がとても自然体で。
凛としていながらも清涼感があり、大人の女性としての憂いもしっかりと表現できていて。
声優アーティストという括りに収まることのない、ポップ・ミュージックとしてクオリティの高い素晴らしいアルバムだと思いますので、ぜひとも聴いて頂けたら幸いです。